日本は生産性大国になれる―『自分の時間を取り戻そう』『武器としての人口減社会』を読んで

先日、ちきりんさん著『自分の時間を取り戻そう』を読みました。「生産性」がキーワードで、この概念が仕事でも家庭でも、すべての人にとって重要なものであることや、どうしたら生産性を向上させられるかといったことが論じられていて、示唆に富む内容でした。

本書の中で特に私にとって強いメッセージだったのが、「生産性を上げなければと真剣に考えるのは、“そうせざるをえなくなった人だけ”だ」という主張でした。

著者はワーキングマザーなどの例を挙げて、「時間などのリソースが無限にある状態では、生産性は決して上がらない。絶対に5時に会社を出なければならないということになって初めて、5時に退社するにはどうしたらよいのか考える」ということを述べています。大いに身につまされるところがありました。

ところで、これを読んで私が感じたのは、「だったら日本の未来は明るいんじゃないかなあ」ということでした。そしてその考えは、村上由美子著『武器としての人口減社会』を読んで確信に変わったのです。

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人口減少という「追い風」

『武器としての人口減社会』は、国連職員などのキャリアを経て、35の先進諸国が加盟する国際研究機関・OECDの東京センター所長を務めている村上由美子氏による著作です。

村上氏は、日本ほど、生産性を上げる「テクノロジーによる雇用革命」を受け入れる環境が整っている国はないとしています。

諸外国では高い失業率に頭を悩ませている国も多く、また、アメリカや途上国では人口が増え続けています。人口が増え続ける国では雇用創出は最優先課題です。そして、テクノロジーによる雇用革命が起これば、少なくとも短期的には失業者が増えます。

このような状況では、テクノロジーを利用した生産性の改革は容易ではありません。しかし村上氏は、失業率が諸外国に比べて低く、むしろ仕事に対して働き手の方が不足しつつある日本では、このような改革が実現しやすいはずだと述べています。

私たちの国には、他の国には類を見ない“急激な人口減少”という、改革を後押しする追い風が吹いているのです。

生産性向上は世界中の課題

「日本は生産性が低い国だ」というのは周知の事実となりつつありますが、生産性の低下は日本だけの問題ではないようです。

下のグラフは、村上氏も本書で紹介しているもので、2001年から2014年にかけての、世界の労働生産性の年平均成長率の推移を表したものです。

出典:Labour productivity growth based on hours worked, total economy level, 2001-14 | OECD READ edition より作成

テクノロジーの日進月歩の発展で、世界の生産性はどんどん向上しているかのような印象を持ちそうですが、近年では多くの先進国で生産性向上が鈍化していることがわかります。生産性の向上は、世界共通の課題なのです。

生産性向上が「必要に迫られなければ、実現しない」のであれば、世界一の少子高齢化社会を迎えつつある日本は、世界一の生産性大国になれることが期待できるのではないでしょうか。

下記の文章が、『武器としての人口減社会』に著者がこめた最大のメッセージだと思います。

テクノロジーが人間の仕事を奪うことを歓迎できるのは、ほぼ完全雇用状態である日本に、深刻な労働力不足という追い風が吹いているからです。

(中略)

このように恵まれた人的資源の有効活用と、テクノロジーによる自動化、効率化の促進を同時に進めていくことで、長年低迷してきた生産性を向上させることができるのです。これは、人口減少から生まれる危機感と必要性がない他の国々にはできないことかもしれません。まさに、今の日本だけが有しているチャンスなのです。

本書を読了すると、日本社会が今後生産性を上げていくのは難しくない、いや、むしろ、今後の世界の生産性向上は日本が先導して進めていくことになるのではないかとすら思えます。

どうせ同じ状況なら、少しでも楽観的に考えよう

このような考えは楽観的過ぎると感じますか?

少し前であったなら、私もそう感じたかもしれません。でも最近私は、世間の雰囲気がちょっと悲観的過ぎるのではと感じます。マスメディアは悲観論を好むもの。でも、下記の記事で出口治明さんが仰っているように、人類の歴史を見てみると、悲観論が勝ったためしはないとのことなのです。

木暮:今日は10代~30代に限定した少人数セミナーということで、みなさんの不安を少しでも払拭できればと思います。早速、どなたか聞きたいことがある方はいらっしゃいますか? 崇高な質問をしなくても構いません…

産業革命で失業者があふれると悲観した民衆が機械打ち壊し運動を起こしても、マルサスが「人口増加に食糧生産が追いつかなくなる」と書いても、学校で石油があと何年で枯渇すると習っても、人々が不安がったようなことは何も起こらなかった。悲観論が無用であることは、これまでのデータを見れば一目瞭然なんですね。

そしてOECDのセンター所長という、膨大なデータを扱う仕事をしてきた人が日本の未来は明るいと言うのだから、明るいのではないでしょうか。

もちろん「このまま思考停止で進んでいってもOK」ということではなく、本書でも日本の労働社会の様々な改善すべき点が指摘されています。

むやみに悲観的にならず、状況を直視してしっかりと進むべき方向に歩みを進めていけば、この国の未来はけっこう明るいのではないでしょうか。

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