蛭子能収著『ひとりぼっちを笑うな』~明日から「ひとり」がもっと心地よくなる本

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「ひとりが好きだけれど寂しがり屋」で、「群れるのは苦手だけれど集団を遠くから眺めるのは好き」という人がいる。

「なんだそりゃ?」と思う人も多いかもしれませんが、もし「私のことだ!」と思うならば、絶対にお薦めできる本があります。俳優、タレントとして有名な蛭子能収さんの著書『ひとりぼっちを笑うな』です。内向的な私には、まさに自分のための本だと思ってしまうくらい、共感しきりの一冊でした。

タイトルを一見すると「孤独を愛する人々だっている。彼らのひとりでいる権利を尊重しろ!」というメッセージの本かな?と思われそうですが、ちょっと違います。

この本では、内向的な人間がどういうものを好み、どういうものを苦手とするのか、そして内向的な人々は、どうしたら生きやすくなるかといったことが、蛭子さん独特の、愉快でひょうきんで、柔らかな文章で綴られています。

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誘いを断れるのが友達

蛭子さんにとって最高の楽しみはオフの日で、休日をどう過ごすかは、前日から綿密に計画を立てるのだそうです。そして、自分の予定を計画済みのときに、友人から誘いを受けたりした場合は、すぐに「ちょっと無理かも。ごめん」と断ると書いています。

そうやって気ラクに断ることができる人が、本当の友だちなのではないでしょうか。

友だちだから断れないっていうのは、僕にはよくわからない感覚かもしれない。(中略)いずれにせよ、僕の場合は自分が自由にすごす時間というものの優先順位が、とても高いんですよね。

大好きな休日が面白くなくなるなんて残念でなりません。自分の思っていることを、自分の思ったとおりに実行して、大満足の一日にしたい。至福のときを奪うのが友だちならば、むしろいなくてもいいんじゃないかな。自由のためなら、僕はそれでも構いません。

私も会社員時代、貴重な休日は自分のために使いたくて、よく人からの誘いを断っていました。断るというのはなかなかエネルギーが要ることで、罪悪感もあります。

でも蛭子さんの「自分が自由でありたいから、他人の自由も同じように尊重する」という言葉を読んで、「他人の自由をきちんと尊重して、それを奪わないように気をつけている限りは、自分の自由を尊重して行動することも、後ろめたく思う必要は全くないんだ。これからも自由に生きていくためにも、他人の自由を尊重するようにしよう」と思えました。

まだまだある、内向的人間あるある

蛭子さんが自己について語った本書を読んでいくと、「あなたは私か!」と突っ込みたくなるほど、共感の嵐でした。一部を挙げると…

  • 「目立ちたくない」一方で、「ほめられたい」。
  • ひとりでいることが好きだけれど、人間嫌いというわけではなく、他人に対する興味は常に持っている。
  • 集団行動は苦手だけれど、集団を遠くから眺めるのは好き。
  • はみ出し者のようだけど、無法者になりたいわけではなく、むしろルールはきっちりと守る方。
  • だからこそ、ルールは「はっきりしたもの」であってほしい。

などなど。読みながら「そういえば私もそうだ!」と自分の特性を再発見することの連続でした。

本書が教えてくれること

本書の魅力的な点は、孤独を良しとするといっても決してすさんだ感じではない点。「内向的な僕たちって、どうもこういうところがあるみたいなんですよ、すみませんね」って感じで、蛭子さん独特の穏やかな語り口で、それを著者自身がどこか面白がっているような愉快な雰囲気があります。

「群れないこと」や「人と違っていること」の良さを説く本にしばしばありがちな、どこか上から目線で人を見下すようなところが全くないのです。「ひとりぼっちの良さ」を語っていながら、こんなふうに穏やかで謙虚で優しい本は、なかなかないのではと思います。

そして、この本の中でとても価値ある情報だなと思ったのが、ひとりを好む内向的な人でも孤独を感じずに生きて行くには、「ある場所」を見つけるといい、という話。蛭子さんは、「群れないことを好む自分がこれまでほとんど孤独を感じずに生きてこられたのは、物心ついたときから自然とその場所を見つけ出してきたからかもしれない」と書いています。

「ひとりが好きだけれど寂しがり屋で、群れるのは苦手だけれど集団を眺めるのは好き」という人が、孤独を感じずに生きて行くために見つけるべき「ある場所」。

その答えは、ぜひ本書を読んで確認してみてください。きっと明日から、「ひとり」が今までよりもさらに心地よくなると思います。