Wikipedia日英記事比較でわかる、日本人が英語を勉強するべき理由

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学生でなくなってからも、ブラック企業で疲弊していたときも、そして現在も、ずっと細々と英語を勉強中です。

以前は「英語ができれば就職で有利になるかも」「外国人と英語でコミュニケーションがとれたら素敵だな」ぐらいの気持ちで勉強をしていました。

でも現在の私の英語学習のモチベーションは、以前とはちょっと違ったものになっています。

ある時期から私は「情報の受信・発信が日本語でしかできない」ということに対して、不安感を持つようになったのです。

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ローヤルゼリー vs. Royal jelly

私は英語学習の一環として「バイリンガルニュース」というポッドキャスト番組をよく聴いています。

‎Apple Podcast内のバイリンガルニュース (Bilingual News)
‎教育 · 2024年

バイリンガルニュースは、MamiとMichaelという日本語と英語を話す二人がそれら二つの言語を混在させた会話で世界のニュースを紹介するという内容の無料ポッドキャスト番組です。

その第159回のエピソードで、二人が「同じものに関する情報でも、日本語のものと英語のものとでは内容が全く異なることがある」という話をしていました。

また、各言語版のウィキペディアで「よく編集されている記事」のランキングを見ると、日本語版には他の言語とは異なる特徴があるということも話題にしていました。

興味を持ったので、私はそれぞれについて確かめてみることにしました。

まず、Michaelが「日英語版ウィキペディアにおける“ローヤルゼリー”に関する記事の違い」について言及していたので、それを確かめるためにウィキペディアの当該記事を読んでみました。

下記が日本語版ウィキペディアの「ローヤルゼリー」のページです。

ローヤルゼリー - Wikipedia

このページを見てみると、Michaelが言っていた通り、肩凝り・冷え症・高血圧など、日本人に多いあらゆる症状を改善させる可能性について書かれています。まるで万能薬という感じです。

次に、英語版Wikipediaの”Royal jelly”のページを見てみました。

Royal jelly - Wikipedia

こちらにも「Uses(効用)」の項目はありますが、日本語版と内容は異なり、以下の数行しかありません。

Royal jelly is collected and sold as a dietary supplement for humans, but the European Food Safety Authority has concluded that the current evidence does not support consuming royal jelly will give health benefits in humans. In the United States the Food and Drug Administration has taken legal action against companies that have used unfounded claims of health benefits to market royal jelly products.

訳:ローヤルゼリーは健康補助食品として販売されているが、EFSA(欧州食品安全機関)はローヤルゼリーの摂取が人間の健康を増進するという証拠は示されていないと結論付けている。米国では、FDA(アメリカ食品医薬品局)がローヤルゼリー製品の販売のために根拠のない主張を行った企業に対して法的措置を取っている。

英語版の記事を読むと、ローヤルゼリーとは「何だか怪しげなもの」といった印象を持ちそうです。

テストステロン vs. Testosterone

ついでに逆のパターンについても調べてみようと思い、今度は「テストステロン」についての記事を見てみました。

テストステロンとは男性ホルモンの一種で、アメリカでは「女性からモテるために重要なホルモン」としてよく知られているのだそうです。「バイリンガルニュース」を聴いているとたびたび登場するのでリスナーにはおなじみなのですが、日本ではあまり聞かないと思います。

日本語版ウィキペディアで「テストステロン」の記事を見てみると、成分や作用、関連する研究報告などについて書かれていました。2000文字ほどで、ウィキペディアの記事としては短めのものだと思います。

テストステロン - Wikipedia

一方、英語版の記事を見てみると…

Testosterone - Wikipedia

非常に長くて驚きました(笑)。スクロールしてもなかなか最下部に到達できません。いかに英語話者がTestosteroneに興味を寄せているのかが窺い知れます。

バイリンガルニュースのMamiちゃんは、「国によって有名な成分は違う」とも言っていました。日本ではローヤルゼリーやコラーゲンなどがとても有名で誰もが名前を知っていますが、海外の人々が関心を寄せるのはグルテンだったり、テストステロンだったり…。

もてはやされるものは、国によって全く異なる。万能薬のように礼賛されているものも、単にその文化圏で人気・有名なものというだけかもしれない。このことをわかっておいた方がいいなと思いました。

ここまでの結論:確かに、同じものでも、日本語による情報と英語による情報は大きく違っていました。

「よく編集されている記事」の日英比較

次に、日本語版と英語版のWikipediaにおける「よく編集されている記事」の違いを見てみました。

今度は英語版から見てみたいと思います。

※このページは随時更新されています。今回示すデータは2016年1月11日12時39分に更新されたものです。
Pages with the most revisions - Wikipedia

第1位はジョージ・W・ブッシュ元大統領。第2位は「WWEに所属する人物一覧」。WWEとはアメリカのプロレス団体だそうです。

以降、「カトリック教会」や「Jesus」「バラク・オバマ」「アドルフ・ヒトラー」「第二次世界大戦」などの政治・宗教に関する項目が多く、

5位「マイケル・ジャクソン」、

8位「ABS-CBN放送の番組一覧」、

11位「ブリトニー・スピアーズ」、

14位「ビートルズ」

あたりは芸能・エンタメカテゴリと言えそうです。

続いて日本語版の同じページにあたる「版の多いページ」。こちらは2016年1月11日3時45分に更新されたデータです。

版の多いページ - Wikipedia

一目見て英語版とは全く様子が違うことがわかります。第1位から20位まで、ほぼすべてがアニメ・漫画・アイドル・テレビ番組など、すなわちエンタメ系の項目です。

10位の「新日本プロレス」、29位の「読売ジャイアンツ」のようなスポーツ関連項目もありますが、政治系の項目は36位の「石原慎太郎」でようやく登場していました。そして37位以降も、総じてエンタメ項目ばかり。英語版に対して、正直「まるで日本語版ウィキペディアには子どもしかいないみたいだな」と感じてしまいました。

今回は「よく編集されている記事」の比較であり、よく読まれている記事など別の面での比較はどうなるかわからないので安易に「日本人はアニメ・漫画・テレビのことばかり考えている」と結論付けることはできませんが、英語版とあまりに違う項目が並んでいるのに驚いてしまいました。

情報の信頼性を決定づける「発信者の多様性」

「バイリンガルニュース」のMichaelは、「日本語による情報には、根拠に欠けるものが多い気がする」とも言います。

もしそうだとすると、それはなぜなのか?両言語の使用者の数や分布を考えてみると、それも単なる気のせいではないように思えます。

Michaelは、「英語による情報には様々な国の人が関与するが、日本語の情報に関わるのは日本人だけである」と続けます。

確かに、英語の情報は、アメリカ人もイギリス人もカナダ人も、オーストラリア人もインド人も香港人も受発信します。

仮にどこかの国の人物が自国でしか通用しないことを、さも普遍的な事実であるかのように書いて発信したとしても、他の国の人が「うちではそれは違う」と修正してくれる可能性があります。

でも、日本語の情報を受発信するのは、世界中でほぼ日本人だけです。

情報の信頼性において「多様な人のチェックを通しているか」「偏った意見になっていないか」はとても重要だと思います。

根拠に欠ける情報や偏った情報、日本でしか通用しない情報などが出てしまった場合、それが日本語で書かれていれば、外部からつっこんでくれる人がいないために、修正されないままになる危険性が英語と比べて圧倒的に高いはずです。

英語と日本語の使用者数に圧倒的な差があることは、情報の質の違いを生むだけでなく、そもそも求める情報が存在するかどうかということにも差があることを意味します。

プログラマーとして働いていたとき、コードのどこにミスがあるのか分からず、ウェブ上を日本語で検索しても一向に解決策が見つからなくて困ったことがありました。

しかし英語で検索してみたところ、あっさりと求めていた情報が見つかりました。日本語しか使えないと、世界ではすでに答えが出ていることに、悩み続けてしまったりもするのです。

このようなことを知ってから、私の英語学習に対するモチベーションは少し変化しました。就活で有利だからとか旅行のときに使えると便利だなどというだけでなく、日本語しか使えない場合の情報弱者っぷりを考えると不安で悔しくて仕方ないから、英語を勉強したいと思うようになりました。

肝心の英語力はまだまだなのですが、この不安や悔しさを忘れずに少しずつ頑張っていけたらなと思います。