こんにちは、絶賛営業中のイラストレーターYukiです。
クリエイターがお仕事を得るために営業活動を行う上で必須のポートフォリオ。これまでに自分が作った作品をまとめて、「私ってこんなものが作れる人ですよ」とアピールする道具です。
今回はこのポートフォリオに「自分が気に入っていない作品を載せるか?」ということについて考えてみたいと思います。
「ポートフォリオに気に入ってない作品を載せるか?」を悩む理由
この問題に悩むのは活動を初めて間もない駆け出しのクリエイターの方が多いかと思います。おそらく次のようなことが起きているのではないでしょうか。
- まだ作風・タッチや技術レベルが安定していないため、「一番良いのは一番最近に作った作品で、昔の作品ほど気に入ってない」状態
- ただし作品数がまだ少ないので、「気に入ってる作品」だけを載せるとなると載せられる作品が少なくなる
- →「掲載点数を稼ぐために気に入ってない作品を載せるか?」で悩む
私の例
具体的に私の例を紹介してみます。
下の2点は、どちらも去年ぐらいに作成したイラストです。クラウドソーシングサイトのコンペにエントリーしようと思って作り始めたものの、結局出さなかったものです。
現在、この2点は正直、あまり気に入っていません。クオリティとしてはまあまあだと思うのですが、これらは少しノイズの入った線で描いていて、今の私にとっては「もう描かない、昔のタッチ」なんです。このほかにも過去の作品には、今では用いないアナログタッチのイラストや、クオリティの低さが気になって気に入っていないものがたくさんあります。
一方、下記のイラストは最近作成したもので、今のところは一応の満足ができている作品です。
よく見ないとわかりにくいかもしれませんが、ノイズや強弱・濃淡の全くないシンプルな線で描いています。現在私はこのようなタッチをメインに制作していきたいと思っており、このタッチの作品を増やしているところです。
将来振り返ったらこの作品も「満足できない」と思うときが来るかもしれませんが、今のところは営業でアピールに使いたい作品の一つです。
で、ここで問題になるのが「前者の気に入っていない作品をポートフォリオに載せるか?」なのです。
まだまだ作品数が少ないので、ポートフォリオを充実させる段階にとても時間がかかる。この作品はあまり気に入っていないけれど、見せられないほどひどいクオリティではないし、点数稼ぎにはなる。何より、「このタッチの方を気に入ってくれるクライアントがいるかもしれないし、ないよりはとりあえず入れておいた方がいいのでは…?」と考えてしまうことがあります。
ポートフォリオは商品カタログ。今後作る気のない商品を載せてもしょうがない
こんな調子で以前はよく悩み、実際に気に入っていない作品も掲載したポートフォリオを出版社に送付したこともあります。
だけど今は、私は、気に入っていない作品はポートフォリオに載せないようにしようと思っています。この考えになったのは、そもそもポートフォリオの役割とは何かを考えたときに、思うところがあったからです。
ポートフォリオは単に「私はこういう作品を作ってきました」ということを示すためのものではなく、「これからこういう作品を作っていこうと思っています」を伝えるもので、その先に「なので、貴社の”これからこういう仕事を発注したい”という部分と一致するところがあれば、ぜひお手伝いさせてください」というメッセージがあるのだと思います。
ポートフォリオを見る側の方に「あっ、この作品いい。今度の企画にこういうの欲しい!」と思ってもらえて初めて、お声掛けいただけます。
つまりポートフォリオとは「これまでの作例紹介」ではなく「これから作れる商品カタログ」と言えるのではないでしょうか。
先ほど紹介した私の「気に入っていない作品」は、「これまでに私が作ったもの」ではあるけれど、「これからこういうのをどんどん作っていきます!」というものではありません。言わば「生産終了した商品」であり、それをポートフォリオに載せることは、メーカー企業が営業用のカタログに生産終了品を載せているようなものだと思うのです。
仮にもし、気に入っていない作品をクライアント側には気に入ってもらえ、発注をいただけたとしても、自分では気に入っていない作品を示して「この作品みたいな感じでお願いします」と言われるわけで、「気に入っていない作品に似たもの」を再生産しなければならなくなるのです。「そんなことにはなりふり構わず1円でも稼がなければならない」という状況の場合は別かもしれませんが、私には、それはとてもつらいことに思えました。
このように考えてみると、気に入っていない作品をポートフォリオに載せることは、自分にとってあまりポジティブな意味があると思えませんでした。
そういうわけでこれからは、ポートフォリオに載せる作品はなるべく「過去に作った作品」ではなく「これから作りたい作品」という意識で選んでいきたいと思っています。
そうなると過去の作品で載せられないものが増えるし、新たに作品を増やす必要が出て時間はかかりますが、長期的に自分が心からやりたいと思えるお仕事ができる事に繋がっていくといいなと思います。
クリエイターの皆さん、一緒に営業がんばりましょう!