AmazonのKDP(Kindle Direct Publishing)を使って漫画(電子書籍)を個人出版する際に知っておくべきことをめっちゃ調べたので、まとめておきます。
通常のKDP出版と「インディーズ無料マンガ」での出版の違いまとめ
AmazonでKindle電子書籍として漫画を出品する場合、「通常のKDP出版」と「インディーズ無料マンガ」での出版の2通りからどちらかを選ぶことになります。
両者の違いをざっくりまとめてみました。
通常のKDP出版 | インディーズ無料マンガ | |
---|---|---|
書籍の内容 | 小説、漫画、写真集 など何でもOK |
日本語の漫画 コンテンツのみ |
販売価格 | 99〜20,000円 ※KDPセレクトに登録 する場合は250〜1,250円 |
無料 |
もらえる 収益 |
35%と70%の ロイヤリティオプション からいずれかを選択 |
インディーズ無料マンガ 基金からの分配金 (読まれたページ数などに 応じると言われている) |
公開できる 地域 |
世界中のAmazonで 販売可能 |
Amazon.co.jp (日本のAmazon) のみでの公開 |
独占販売 について |
KDPセレクトに登録する 場合はAmazonでの 独占販売とする必要がある |
Amazonでの独占販売 とする必要はない (noteなどでの 併売OK) |
「通常のKDP出版」では漫画以外にも小説やビジネス書、写真集など、あらゆる形式の電子書籍を出版できます。
「インディーズ無料マンガ」はその名の通り「無料マンガの出版」専用のサービスです。日本独自のプログラムであり日本語コンテンツのみがサポートされています。読者は無料で書籍をダウンロードでき、著者には「インディーズ無料マンガ基金」という資金から読まれたページ数などに基づいて(と言われている)分配金が支払われます。
次にそれぞれの特徴をもう少し詳しく紹介します。
通常のKDP出版
通常のKDP出版では書籍ごとに「KDPセレクトへの登録」というものができ、これをするかどうかによって設定できる価格や受け取れるロイヤリティの割合が変わってきます。
KDPセレクトに登録しない場合:
販売価格は99〜20,000円、受け取れるロイヤリティは35%
KDPセレクトに登録する場合:
販売価格は250〜1,250円、受け取れるロイヤリティは70%
「KDPセレクトって何なの?」という話ですが、KDPセレクトに登録すると以下のようなメリットがあります。
KDPセレクトのメリット①その本がKindle Unlimitedに登録される
KDPセレクトに登録した書籍は自動的にKindle Unlimitedの対象タイトルとして登録されます。
Kindle Unlimitedは月額980円で200万冊以上の対象タイトルから好きなだけ電子書籍を読める購読プログラムです。
登録した書籍がKindle Unlimitedで読まれると、読まれたページ数に応じて出版者に「KDPセレクトグローバル基金」から分配金が支払われます。支払額の計算方法などについては下記のページに記載されています。
Kindle Unlimited および Kindle オーナー ライブラリーのロイヤリティ | Amazon公式サイト
つまりKDPセレクトに登録した場合、「書籍が売れた場合にもらえる販売額の70%のロイヤリティ」と「Kindle Unlimitedで読まれた場合に、読まれたページ数に応じてもらえるロイヤリティ」という2種類の収益源ができるというわけです。
ちなみに以前はKDPセレクトに登録すると、Kindleオーナーライブラリー(Kindle端末を持っているAmazonプライム会員が1か月につき1冊だけ、好きな本を選んで期限なしに利用できるというサービス)にも自動的に登録されていたのですが、残念ながらKindleオーナーライブラリーは2021年1月4日をもって終了してしまいました。
KDPセレクトのメリット②販売時のロイヤリティとして70%を選択できるようになる
書籍が売れた際に受け取るロイヤリティが35%だけでなく、2倍の70%も選べるようになります。
KDPセレクトのメリット③期間限定で無料販売もできる
インディーズ無料マンガと違い、通常のKDP出版では書籍の価格は最低でも99円からしか設定できず、通常は無料にはできません。
ただしKDPセレクトに登録している書籍であれば、期間限定で無料販売を行うことができます。無料販売を行うことで、より多くの読者を獲得できる可能性があります。
無料販売ができるのは「90日ごとに5日間」で、5日間連続で実施することも、1日ごとにばらばらに実施することも可能です。
KDPセレクトの注意点:独占販売にしなければならない
書籍をKDPセレクトに登録した場合、その書籍はKDPセレクトに登録している期間中、デジタル版をKindle ダイレクト・パブリッシングでの独占販売とする必要があるとされています。
独占販売の義務とは、その本の電子書籍版をAmazon以外のプラットフォームで販売・配信等してはいけないということです(紙の本は問題ない)。つまり「Amazonで売りつつ、noteでも有料で売る」みたいなことができなくなります。
ただしこの制限がかかるのは、当該書籍をKDPセレクトに登録している期間のみです。KDPセレクトの登録期間は90日間ごとに自動更新されますが、更新を止めることも可能です。止めた後に再登録することもできます。
KDPセレクトの更新方法・停止方法などはこちら。
70%のロイヤリティが受け取れるのは大きいので、通常のKDP出版を利用する場合、可能であればKDPセレクトへの登録を行うのがよさそうです。
インディーズ無料マンガでの出版
「インディーズ無料マンガ」は「無料マンガの出版」専用のサービスです。販売価格は無料ですが、「インディーズ無料マンガ基金」というものが創設されており、著者はこの基金から分配金を受け取ることができます。
メリット①Amazon独占販売にする必要がない
Amazonでの独占販売とする必要はなく、すでにAmazonのサービス以外のサービスで公開中の作品でも公開可能です。つまりインディーズ無料マンガなら、漫画をnoteなどにもアップしながらAmazonで出版することができます。
メリット②1ページからOK
実は通常のKDP出版でも「何文字以上」や「何ページ以上」といった条件はないためインディーズ無料マンガのみのメリットというわけではないのですが、インディーズ無料マンガでは「1ページからOK」と明記されています。
実際にインディーズ無料マンガで出版されている漫画には数ページしかないものもあります。
多くの人に読んでもらい高く評価してもらうということを考えるとある程度ページ数があった方がよさそうですが、「とりあえず試しに出版してみたい」という人にとって「1ページからOK」と明記されているのは有り難いと思います。
メリット③分配金がもらえるチャンスあり
Amazonは「インディーズ無料マンガ基金」という基金を作っており、この基金から著者に分配金が支払われます。支払い額の計算方法は明らかにされていませんが、ダウンロード数や読まれたページ数に基づいて決まるようだと言われています。
また、Amazonは2019年〜2020年にかけて「第1回Kindleインディーズマンガ大賞」を開催しており、受賞4作品に100〜200万円が進呈されたりもしています。今後もあるかはわかりませんが、入賞&一攫千金を狙うのもありかもしれません。
注意点①Amazon.co.jpでのみの公開となる
注意点として、「インディーズ無料マンガ」は日本のAmazon独自のプログラムなので、「インディーズ無料マンガ」として出版した場合、Amazon.co.jpでのみの公開となります。日本以外のAmazonでは公開されません。
日本以外のAmazonでも公開したい場合は、無料マンガではなく、有料の電子書籍として通常のKDPで出版することになります。
注意点②同時にAmazonで有料マンガとして販売はできない
「インディーズ無料マンガ」の規約には「Amazon.co.jp 上で、重複するコンテンツをインディーズ無料マンガと有料マンガで出版することはできません」とあります。
当然と言えば当然ですが、インディーズ無料マンガのラインナップに入っていて無料で読める漫画が、同時に有料でも販売されているという状態があってはいけないということですね。
有料販売と無料公開の両方を試したい場合
漫画をAmazonで出版する際に、有料での販売と無料での公開のどちらも試してみたいというニーズがあると思います。
そこで、「同じコンテンツをまずはインディーズ無料マンガとして出版し、その後、そのコンテンツをインディーズ無料マンガプログラムから取り下げた上で、今度は有料でKDP出版するということは可能かどうか」について、Amazonに問い合わせてみました。
すると回答は「お客様がご提示されている方法は、規約等に反するものではなく、実施していただいて問題ございません。」とのことでした。
(Amazonのサポートはレスポンスが良いと噂には聞いていましたが、めちゃくちゃすぐ回答が来てびっくりしました)
同じコンテンツについて「有料でのKDP出版とインディーズ無料マンガとしての出版を同時に行う」という状態はNGだが、同時でなければOKということのようです。
というわけで、有料販売と無料公開の両方を試してパフォーマンスを見てみたいと思います!